大判例

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大阪高等裁判所 昭和41年(ネ)1910号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕三、賃料増額請求の当否

そこで、本件増額請求の当否につき検討するに、本件建物の最終賃料が昭和三八年四月現在月額二、〇三〇円であつたことは前示のとおりであるところ、本件建物を含む五戸建一棟の敷地の固定資産税台帳価格が、昭和三八年度三四四、一〇〇円、翌三九年度三、三三〇、〇〇〇円(但し同年度の課税標準額は、成立に争いない乙第二号証によると四一二、九〇〇円)であることは争がなく、又<証拠>によると、昭和三九年七月頃の本件賃料は近隣のそれに比して低額であることが認められ、これに昭和三八、三九年頃の諸物価の高騰が著しかつたという顕著な事実を勘案すると、本件賃料については、昭和三八年五月頃、翌三九年四月頃、同年七月頃にそれぞれこれを増額するを相当とする事由が存したものというべきである。

よつて、右の額につき判断するに、前判示のとおり本件賃貸借は昭和一〇年頃より継続し、その最終約定賃料が昭和三八年四月当時一カ月二、〇三〇円であつたこと、その内容に照らし、当裁判所これを採用し得る鑑定人小野三郎の賃料額に関する鑑定の結果によれば、昭和三九年七月一日現在の本件賃料(統制令の適用なき場合)の適正額は一カ月一四、三五四円とせられていること、官署作成部分につき争なく、その余の部分の成立は弁論の全趣旨により認められる甲第二号証及び控訴本人の原審供述により、昭和三八年五月及び翌三九年四月頃家主たる控訴人と、被控訴人と同様の立場にある近隣の借家人数名との間に本件請求額に準ずる増額の合意の成立したことが認められること、その他上来判示の諸事実に照らすと、本件賃料は、控訴人の増額請求どおり、昭和三八年五月頃月額二、七〇〇円、翌三九年四月頃月額三、四〇〇円、同年七月頃月額一四、三五四円(当初の一七、〇〇〇円を後に減額)とそれぞれ増額せられたものというべきである。

ところで、右増額の効力発生の正確な時期に関し、第一次分の月額二、七〇〇円については昭和三八年五月一日なること明白であるが、第二次分の月額三、四〇〇円については、前叙争のない事実によれば右意思表示は昭和三九年四月上旬口頭で為されたというのであるから、他に特段の主張立証のない限り、右第二次分の増額は、右意思表示の到達後であることが確実な同年四月一一日よりその効力を生じたものというべく、又第三次分についても、右と同様、意思表示到達の翌日たる昭和三九年七月二日よりその増額の効力を生じたものとしなければならない。

四、これに対し被控訴人は、昭和三八年五月分より翌三九年六月分までの賃料につき弁済供託を主張するが、それが従前の賃料額(一カ月二、〇三〇円)の割合による提供供託であることは被控訴人の自認する点であるところ、これを右各増額せられた賃料額と比照すると、その差額は極めて僅小とはいえず、又本件賃貸借については前叙の如くその目的建物の用途ないし統制令適用の有無につき微妙な問題があるとしてもそれは、解除権の行使についてはともかく、供託の効力判定にまで影響を及ぼすものとは考えらないから、民法供託の制度の趣旨に照らし、右供託は弁済供託としての効力を有せず、被控訴人は同期間内の賃料についても、依然その全額(増額せられた全額)について支払義務を負うものと解すべきである。(入江菊之助 小谷卓男 乾達彦)

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